売掛金や手形の早期資金化を検討すると、でんさい(電子記録債権)とファクタリングのどちらを使うべきか迷うことがあります。どちらも「支払期日前に資金化する」点は共通ですが、仕組み・必要な準備・償還請求権(遡求)の有無・スピード・コストが大きく異なります。本記事では両者の違いと使い分けを、中小企業診断士の視点で整理します。
1. でんさい(電子記録債権)とは
でんさいとは、「でんさいネット(全銀電子債権ネットワーク)」上で電子的に記録・管理される金銭債権で、手形の電子版とも言える仕組みです。紙の手形のような紛失・盗難リスクや印紙税がなく、分割譲渡もできます。資金化する場合は、金融機関を通じてでんさいの割引(または譲渡)を行い、支払期日前に現金を受け取ります。
利用には、自社と取引先の双方がでんさいネットに利用登録していることが前提となり、割引には金融機関の審査(与信)が伴うのが一般的です。
2. ファクタリングとは(おさらい)
ファクタリングは、保有する売掛債権(請求書)を売却して早期に現金化する手段です。でんさいネットへの登録は不要で、取引先がでんさいを使っていなくても利用できます。2社間方式なら取引先への通知も不要。仕組みはファクタリングとはを参照してください。
3. でんさいとファクタリングの違い
| 項目 | でんさい(割引) | ファクタリング |
|---|---|---|
| 対象 | 電子記録債権(手形の電子版) | 売掛債権(請求書) |
| 事前準備 | 自社・取引先の双方がでんさいネット登録必須 | 登録不要 |
| 取引先の参加 | 必要(取引先も利用者であること) | 不要(2社間なら通知も不要) |
| 償還請求権(遡求) | ありが一般的(債務者不払い時に遡求される) | 多くの2社間はなし(ノンリコース) |
| 審査の対象 | 金融機関が利用者にも与信 | 主に売掛先の信用力 |
| スピード | 金融機関手続きで時間がかかる傾向 | 最短即日も可能 |
| 手数料・コスト | 低め(割引料) | 高め(1〜15%程度) |
大きな違いは「取引先の参加が要るか」と「償還請求権(遡求)の有無」です。でんさいは低コストですが取引先の登録が前提で遡求リスクが残りやすく、ファクタリングは取引先非参加でも使え、2社間ならノンリコースで貸し倒れリスクを移転できます。手形の早期現金化(手形割引)との比較はファクタリングと手形割引の違い、融資との違いはファクタリングと融資の違いもあわせて確認してください。
4. どちらを使うべき?
- でんさいが向くケース: 取引先もでんさいネットを利用している/銀行取引が安定している/低コストで継続的に資金化したい
- ファクタリングが向くケース: 取引先がでんさい未参加/取引先に知られたくない(2社間)/スピード最優先/貸し倒れリスクを移転したい(ノンリコース)
製造業など手形・でんさい取引が残る業種では、両者を状況で使い分けるのが現実的です(製造業のファクタリング)。スピードと秘匿性を重視するなら、TRUSTLYNEやレガシアファクタリングなど複数社に相談して比較するとよいでしょう。